楽器の性格、奏者の性格

harikona2007-11-21

ピアニストの
西村由紀江さんが
連載しているコラムで、
演奏している楽器によって、
奏者の性格ができてくる、
というようなことを
おっしゃっていて。


クラシックギターの奏者の方と
一緒に食事をした時のことを例にあげて、
ギタリストは、
自分の楽器を自分でメンテナンスもするし、
演奏もするから、
全部自分の思い通りにする,というか,
どうしても自我の強い発言をするけれど、
ピアニストは、
調律も、セッティングも、人の手に任せなければいけないので、
ステージに立つ時は、
もう、あるがままを受け入れるしかなく、
出たとこ勝負!なところがあるけれど、
実は、私生活でも、出たとこ勝負、というか、
その場にあるのもだけで、なんとかしよう、
という心構えがあるような気がします。
というような趣旨だったと記憶しているのですが。
もちろん、すべてのピアニストに当てはまる訳ではないとは思いますけれど。


先日の上原ひろみさんのコンサートで、
まあ、ピアニストのコンサートなら当たり前なのかもしれませんが、
途中10分の休憩時間の間に、
調律師さんが、彼女のグランドピアノの調律をしていたのです。
こういう風景は初めて見たので、
(もちろん,ギターやドラムのチューニングを行っているのは,
いつも見ているけれど)
とても新鮮に写りました。
その調律をなさっている調律師さんの背中を見ていて,
前述の西村さんの言葉を、なんとなく思い出していました。
あるがままを受け入れる,か。
まさしく,彼女のスタイルそのものだな,と思ったのです。


世界中を飛び回っている彼女。
リハーサルもままならないようなステージ,
空港から会場へ直行,荷物が届かない,移動が過酷,
スタッフとのぶつかり合い・・・。
そんなことが,ざらに起きる毎日。
それらひとつひとつに苛立っていても,なんの解決にもならない。
ならば,怒るよりも,笑ってしまおう。
そう思って日々すごしている。
何かのインタビューで,読んだことがある。


その姿勢は,ステージの上でのプレイにも,見事に現れていて。
相手のプレイが素晴らしければ,もっと弾いて!!と,盛り立てるようにし,
どんな変化が起こっても,どっしり構えてる感じが。
ものすごい緊張感と同時に,
何もかもを包んでしまうような暖かさもあって。
これが,「元気がでるピアノ」と言われる所以なのかな,と思った。
会場を出るとき、体が軽くなったような気がしたもの。
なんだろ。
ドン、と爆発させるような熱量ではなくて、
体も心もホカホカしてくるような感じ。
心が弾む、っていうか、ウキウキした気分、になったような。
今までにない、幸福感だったなあ。

アナザー・マインド

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