星ではなく、月へ。

とある本に
「失った痛みではなく、証(あかし)を得た印(しるし)なのだ」
と言った趣旨のことばが載っていた。


そう解釈できるようになるまでは、
何年かかるかな。



23日は、
失くしてしまう恐怖ばかりが覆いかぶさる。
24日は、ただ何も起こらないことばかりを願う。
そんな二日間。





札幌ペニーレーンは、あいつがとても愛してくれたハコ。
10月、2年ぶりに足を踏み入れた。
最後に会ったのは2年前の10月、ここでだった。


入る前からあいつのことばかり考えてて、
ライブ中も、何度もよぎってしまって。
ステージに立つひとたちに申し訳ないな、と思いながらも止められなかった。
あいつとは、ここで共有した時間が一番多いから。
大いにひねくれたあいつの本心をやっと聞けた、と思った瞬間も、
聞けると思ってたのに完全に閉じてて悲しくなったことも、
散々あるよ。ああ、散々な。


その日見たライブは、
叩きあげのライブバンドなのに、トラブルが頻発して、
・・・あいつが意地悪してんのかな、なんてちょっと思ってしまったよ(笑)



話変わって。



12月3日。
三人のフジファブリックをここで見た。
あいつが選んだ、
命を削ってまで鳴らさざるを得なかった不器用なあいつを支えて、一緒に鳴らしている三人。
本当に、素晴らしいプレイヤーだと、改めて思い知らされたよ。
三人の音が鳴った瞬間、
ああ、フジファブリックの音だ、と、体が喜んだのがわかった。
この音が、聞きたかったんだよ、ライブで浴びたかったんだよって。
やっぱり、四人でフジファブリックだよなって。


おまえさんの不在を引き受けて、
それでも、フジファブリックとして鳴らすことを決めた、
その覚悟を見た。
どれだけの葛藤と痛みと苦しみとを、抱えてしまったのだろうか。
それでも、それでもフジファブリックであることを誇りとして、
そこに立つことを選んだ三人に、あたしは精一杯の感謝と拍手を送った。
そして、それは、新しい彼らの一面を引き出す結果となっていた。
まだまだ、物足りないところも、できてないところたくさんあったけど、
とてもいいライブだったと、思った。


サポートギターを入れないことや、
・・・・この状況下でも{地平線}を演ったこと。
彼らの意地と、信念を見たよ。
そして、彼らのプレイヤーとしての底力をね。


正直、すげえと思った。
おまえさんのうたとギターが無くて、
四人の全力で、半ば力技ではあったけれどあれだけの渦を生みだしていたのは、
高まる、というより、圧倒された感はあったな。
能力パねえやね。
・・・ダイスケ、今までどんだけおいしいとこだけもってってたねん、と思ったし(笑)
加藤の本気が、やっと少しだけ見えたことと(笑)
総くんの、演奏力が並みはずれてる上に、人としての魅力があるってことや、
トシちゃんがものすごいってのもね。
もう、今更ながら、改めて。
そんな人たちが形振りかわまずやんないと、
おまえさんの不在を補えないし、それでも補いきれてないっていう。


おまえさんがいないフジファブリックは、
なんだかものすごくキラキラしていたよ(苦笑)
むずがゆいくらいにね(笑)
だけど、あれだけのスキルをもってるプレイヤーが、
形振り構わず全力で鳴らしても、おまえさんの楽曲にはおっつかねえんだって、
・・・・・・結果論だけどよ。


いいかどうかは正直わからないけれど、
あたしは、おまえさんのどうにもならないドロドロしたところを、
好きになっちまったんだなって・・・まあ、わかってたこと確かめたような。
だから、聞きたかったものの半分以上はちゃんと聞けなかったけれど(苦笑)
・・・そういう方向のうたは、総くんにはまったくもってうたえてない。
今の総くんには、うたえないだろうなって。
本質が、まったく違うからね、おまえさんとは。
今後、どうなるかは判断できんけれどね。
これから、総くんは、おまえさんと戦っていかねばならんだろうから。
呼応した何かが、溢れだしてくるかもしれないし。
・・・いいうたいてに、引き受けられるうたいてに、なれるといいのだけれど。



それから、もうひとつ、心底思ったことは、
おまえさんが作ったうたが、今後ライブで演奏されないなんて、
あってはならないことだ、ということ。
おまえさんが作った、
最高にかっこよくてへんてこで、美しくて、心が跳ねまわるようなすごいうたを、
たくさんのひとたちと共有できなくなるなんて、
そんなこと、してはならないんだ。


「MUSIC」の中のうたを聞けて、うれしくてたまらなかった。
あんなに素晴らしいアルバムの曲、やっと生で聞けて、
正体を見るまではいかないけれど、掴みかけるくらいにまで、
演者と受け手とでわかちあってやっと行けたような気がする。
ホントにねえ、おまえさんはむつかしいから(苦笑)


ハードルはめちゃくちゃ高いと思う。
三人に背負わせてしまう申し訳なさもある。
あたしは、うだうだ言うだけだからさ。
でも、みんな、志村正彦を、理解したくて、なんとかその才能と能力に追いつきたくて、
演奏する側も、受ける側も、必死にやるしかないんだなって。
あのクオリティーを出せと、損なってはならんと、押しつけているし、
それを重々承知で、三人はステージに立っているのだから。
みんなで、何万人もの力で、やっていくしかねえ。
だけど、もう、正解はおまえさんからは直接もらえないから、
一生葛藤していくしかねえんだ。
まったく、どんだけ罪な奴なんだかよ。


{会いに}
欲目かもしんないけど、
あの日のこのうたの時には、おまえさんが、いてくれてる気がしたよ。
踊りながら、歌いながら、涙が止まらなくて。
やっと会いに来てくれた、気がしたんだ。
そこに、いてくれたような。
うれしくて。
総くんのうたも、無理がないというか。
歌い始める時の覚悟も違ったし、
おまえさんの真似でもなく、うたいたいようにうたっているのに、
おまえさんの、においがする。
このうたは、やっぱり特別なんだなあって。
これ聞けただけで、来た甲斐があったな。
三人と、あたしと、おまえさんの繋がりを確かめられたような気がしたよ。
この、7年間の分かち合ってきた時間は間違いじゃなかったって、
少しは、わかれてたのかなって。
おまえさんがほんのすこし残したカケラを、
これだけに昇華できたのは、何より三人と周りの人たちの真摯な向き合い方であり、
それをこうやって受けられるあたしは、
少しはおまえさんに、近づけていれればいいな、と。



おまえさんの、ドロドロしたところに魅かれたって書いたけれど、
こうやって、陽の気が強いうたが、こんなに大きく広がっていけてるところが、
おまえさんの才能の裏打ちなんだと思う。
どれだけ、理解しがたい負の意識を抱えていようが、
これだけの人間を、本人が居ない中で鳴らしても、笑顔にしちまうだけの、
音楽の「楽」の部分を最大限に引き出せる才能が、あるからこそなんだよ。
{虹}のね、客の食いつき方ハンパなかったよ。
バカじゃねえかって思うぐらい、合唱になってたしよ(笑)
あたしも、相当踊ってたし(苦笑)
おまえさん、やっぱ天才だわ。


お互い、素直じゃないもん同士、喧嘩みたいなライブだったけどさ、今までは。
あたしは、おまえさんに惚れてるよ。全力で。



ホシデサルトパレード。
課題も多いし、不満もあったし、圧倒的な喪失感も、また味わった。
けど、きっと彼らなりに、見えたこともあったろうと思う。
いい、ライブだったよ。
そう、思うだろう?


これから長い戦いだなあ。
やるしかねえか。
もう別のバンドだからなんていうのは、姑息ないい訳でしかないからね。



まったく。
おまえさんのおかげで、うかれっぱなしの世間と、益々溝が出来ちまったよ(苦笑)
まあ、
お互い、らしくていいけどな。