立ち返る、自問自答。

harikona2009-01-13

俺のおやじは、
何からも逃げる人だった。
仕事がうまくいかなくなると、
食わせなきゃならない
家族がいるにも関わらず、
そこから逃げ、
当然、
金が入ってこないのに、
辞めたことや、
うまくいっていないという現実を
受け入れまいとして、
いつか返せるだろうと、
なんの保障もないまま、
金を借り、
これではいかんと、
話をしようとする家族からも逃げ、
一言も口を聞かず、
しまいには、
何日も失踪するような奴だった。


その父の母・・・私にとっては祖母だが・・・は、
己の息子の非を、まったく認めない人だった。
目の前に起こっていることを直視することをせず、
息子がそんなことをするのは、自分の育て方やDNAや、本人の性質の所為ではなく、
外的要因の所為だ、といつも決め付けていた。
母は、謂われのない罵倒を浴びせられ、母の親族まで蔑すまれ、
ある時は、田舎の拝み屋を呼んで、祈祷をさせたりもした。
俺は、
意味がまったくわからず、とても、気持ちが悪かった。


母は、
問い詰めても、なだめてもすかしても、
何も言おうとせず、ただ自分に埋没してしまうおやじとやっていくため、
「考えない」という、
もっとも即効性はあるが、
なんの解決にならない方法でもって、乗り切ろうとしていた。
それは、俺という子供を、
父のない子とすることが、よくないことだと、母なりに思っていたからであろうし、
キリスト教に帰依している身として、
家族というものを必死に守ろうとしていた結果であったのだろうが、
ひたすら働き、人に頭をさげ、
ひっきりなしに来る借金取りの矢面に立つ毎日に、
当然ながら、体力も、精神力もすり減らし、疲れきっていた。


そんな家に、小学生のころから育った俺は、
かなり早い段階で、父も、父方の祖母のことも、
価値観も思想も、まったく相いれない理解できない人だと認識しており、
もうどうにもならないものとして、恨むことも、憎むこともあきらめていた。
そんな感情を持ったところで、食っていくためには無駄なことだったし、
学生である自分が、ただ悶々と思っていても、一文の得にもならず、
また助けにもならないことだと、悟っていたから、
とにかく早く働きに出て、母を楽にさせてやりたかった。
それも、
アルバイトやパート、単純労働等の低賃金では、
自分と母の一生を養うことは叶わないから、なんでもいいという訳にはいかない。
確たる保障のある、安定した「職」に。
そして、職に就いた暁には、母の面倒を最期まで見ること。
それは、
生涯の伴侶と選んだ人間に裏切られてまで、必死に俺を育ててくれた、
母へのせめてもの恩返しであるし、この人から生まれた俺の責任であると。


高校を出て、念願であった職につき、
自分が、これで食って行ける、と判断したとき、
母とおやじに離婚届を書かせ、母を連れて、家を出た。 



それと同時に、
自分が、他人と家族になる、ということは、一生起こり得ないだろうという、
ある種あきらめにも似た感情があった。
俺は、あのおやじや祖母の血を引いており、
ああはなりたくない、と、心底思ってはいるものの、
絶対にならない、という自信が、はっきり言って無く、
また、その性質が、自分の子孫に現れることを恐れたからだ。
同じ過ちを、繰り返すくらいなら、ここで絶ってしまった方がよい。


また、自分が出会う他人が、そういう素地を抱えているかもしれないという恐怖から、
深く関わる、増して、自身をさらすという、
危険極まりない行為に走ることは、避けねばならないと、
強く自分を戒めている。
共に分かち合うことを、他人には、期待してはいけない。


同じような想いをすること、
また、他人に味あわせるようなことは、もう懲り懲りだ。


それぞれが、それぞれの考えと、足で、立っていて、
お互いを尊重しあって、
頼り合うようなことがなければ、うまくやっていけるとは、思うが。




だが、
どうだろう。


ここへきて、
俺は、仕事から逃げようとしている。


目の前に、おやじみたいな奴ばっかり出てくるんだよ。
祖母の思考のような、忌むべき人間もわんさかあふれかえってるんだ。
世の中の大多数の人間が、そうであると、頭では認識していたつもりだったが、
いざ、面と向き合っていると、
恐怖と嫌悪で、身がすくみあがってしまう。
それは、
母が死んだあと、
自分がこうなるかもしれない、という、恐れも含まれていると思う。
無意識も、意識も、もうここには居たくない、と言っている。
もう、うんざりだ。


それでも、
俺は、ここに居場所を求めたのだ。
やらねば、ならんのだ。
居なきゃいけないことだけは、確実なのだ。
ここを出たところで、母を背負って、やって行ける場所は、もうどこにもない。



はい。
結構追い詰められてますよ(笑)



なんとか、します。
できるはずです。
俺は。
負けてる訳にゃ、いかねえんだ。
命、かかってんだ。



あー、
そこそこ裕福な、次男坊に生まれたかったな(苦笑)
はは、冗談、じょうだん。
そんな都合よか、いかねえし、
状況はキツイが、
紆余曲折の末、できあがってる自分のこと、嫌いじゃねえもん。