LOST IN TIME 少年 渋谷AX

ワンマンライブ "少年"
SHIBUYA-AX
06.11.23


あくまで個人的に思ったことを記載しています。
ご本人及び周辺の方々には一切関係ありません。
今回ばかりはMCは割愛させていだだきました。
もう、それどころでは、なかったので。
なお,敬称は略させていただきました。


<セットリスト>
旅立ち前夜
証し
約束
誰かはいらない
雨が上がって(新曲)
最後の一球(新曲)
されど犬走る
カッターナイフ
然様ならば(新曲)

まだ故郷へは帰れない
鼓動
26(新曲)
車輪の下(新曲)
ココロノウタ
手紙

EN-1
さぁ旅を始めよう(新曲)

告白(新曲)

EN-2
あなたは生きている


新曲が多かったので、公式HPからセトリいただきました。


榎本がいないLOST。
事実として、まったく受け入れていないままに会場に赴いた。
最後の姿も見ていないし、
居なくなったのだと言われても、私の中のLOSTでは、まだ彼の音が鳴ってるから。
でも。
これでは駄目だ、と思ってもいたので、
海北に引導を渡してもらうつもりで、会場へ。
始まる前はため息ばかりついていた。


正直始まってから6曲目くらいまでは微動だに出来なかった。
ギターをかき鳴らしてセンターに立って歌う海北。
心なしか歌い方も前より荒く強くなっていて。
サポートのお三方。
強く,激しい大岡。
もう何もかも,見たことのない,聞いたことのないものばかりで。
ああ,私の知っているLOSTの音が聞こえない。
どこを聞けばいいんだろう。
そればかりを探していたような気する。
「証し」は特に辛かった。
あの音がしない。
事実を前にして,ただ立ちつくすしかなかった。
涙がこぼれた。


このままでは・・・。
どうしたらいいかわからないまま,時間は過ぎてゆく。


「されど犬走る」
海北が笑顔で歌っている。
歌いながら笑みがこぼれるなんて・・・。
その顔を見たとき,
風が吹いて季節の変わり目を感じるように,静かに理解した。
ああそうか。
私の向き合い方が間違っていたんだ。
今目の前で鳴らされている音,これこそがLOSTの音なのだ。
海北の意識が,もう以前とは別の方向を向いている。
今の,これからのLOSTの鳴らす音が,
あたしにとってどう響くか。そういうことなんだ。
過去を探すようでは,目の前のことを理解できるわけがない。


「然様ならば」「蛍」「まだ故郷へは帰れない」
別れの歌が続く。
過去を否定するのではなく,いとおしみながらも,
新たな地平に立つ。
私の中の過去のLOSTにさよならを告げるように,促されたような気がした。
もう,立ち戻ることはないのだから,と。
LOSTに出会ってからの3年間を思って,少し泣いた。


すべてをぶちまけるように,海北が歌をはき出している。
ステージの上の熱を感じながら,ふと思う。
私は何故LOSTが好きなのか,どういうところに惹かれたのか。
私にとってLOSTの音楽は,藍色だった。
深い夜の底。悲しみの淵。後悔と懺悔。冬の凍てつく空気。
白すぎて青く見える雪。遠い恒星の輝き。炎の揺らめきの中心。
もちろんそうじゃない色の曲もたくさんあるけれど,
曲の中に必ず青い影を感じていた。
強く激しく思うことの温度が高すぎて青白く感じる曲たち。
そして,どこかで,それを静かに見つめる影。
嵐のような葛藤の中の,ほんのわずかな静謐。
その深い深い青に私は惹かれ,
見つめることによって,たくさんのものに気づかされた。
そして今,その色が,確実に変化している。
まだ何色なのか,はっきりとは感じ取ることが出来ては居ないけれど,
あの青い影が,なりを潜めている。
だからといって,闇雲に単色しか発していない訳でもない。
地続きであることは,感じられる。けれど。
変わったからこそ,気づかされる事実。


野音の最初と最後に歌われた新曲「さぁ旅を始めよう」と「告白」
あの時に歌われた意識と,今の意識はまったく別のものだ。
まるで違う曲に聞こえた。
あの時は静かに靴ひもを結んで立ち上がったような印象だったけれど,
今日は激しい海風が吹く断崖から,一歩踏み出そうとしているような,
大きなものに立ち向かって行くような力強さと決意が聞こえた。
LOST IN TIMEはこの曲から始まりました」と歌われた「花」
少し驚いたのは,
音源になっているあの時の海北大輔と,
同じくらいの温度で,今の海北大輔の声がしたこと。
たくさんのことがあって,大きくなって,
そして,新たな先を見てはいるけれど,
今,進もうとする熱意は,あの時のがむしゃらさと同じなのかもしれない。


ギターを持たず,無防備なままで歌われた「あなたは生きている」
榎本がいた時から思っていたことなのだが,
海北のうたは,篭もってる思い,意志が真っ直ぐで強すぎるのだ。
聞き手に妥協を許さない。
その思いを受け止めるだけで,聞き手は精一杯になってしまう。
心がいっぱいいっぱいで,体にまで意識が回らない。
映像で彼等のライブを見て、誰も踊っていないことを不思議に思った。
その後、初めて彼らのライブを体験したとき,
体が動かないのはそういうことなのだと,身をもって理解した。もう3年も前のことだ。
あれから何度も足を運んでいるが,やはり,
確固たる意志のある曲,思い入れが強い曲では動けない自分が居る。
ある会場で榎本が言っていた。「もっと,踊れる音にしたい」と。
私には「海北の意識に負けない音にしたい」と言っているように聞こえた。
今,目の前で鳴っているそれは,彼の思いが叶っているように見える。
図らずも,榎本がいなくなったことによって。
曲の全てが海北の意識と同じ強さで鳴っている。
だが,こうなることは果たしてよかったのだろうか?
少なくとも私は,
あまりにもすべてが強すぎて,
いつもにも増して身じろぎすら出来なかった。
歌うことに全てを注ぎ込んでいる海北の声は,意志の強さを増して,
大きく大きく響いていた。


海北大輔,大岡源一郎。
二人の心の底からの告白と,
これからのLOST IN TIMEが見つめる先を示された2時間。
私は,今までの彼らへの区切りをつけること,
そして目の前の彼らの新たな門出に立ち会うことだけで精一杯で,
受け入れることは,正直出来なかった。それだけの余裕はまったくなかった。
海北は我々に「ついて来て欲しい」と言った。
そして「もっと売れたい」とも。
ついて行きたい,とは思うけれど,
新しいLOST IN TIMEが自分にとってどういう存在になるのか,
まだ,答は出せない。
まだ。


新しい音源と,次のライブを待ちたいと思う。


余談ではあるが,サポートのお三方に深く感謝したい。
時に暴走しそうになる海北をしっかり支えてくださっていた。
特に鍵盤のシュンちゃん。
私にとって,なじみのある彼の鍵盤は,
とまどう私に少し安心感を与えてくれた。
素晴らしかった。

まだ故郷へは帰れない

まだ故郷へは帰れない