新しい物語へ

感情の起伏は大きい方ではない。
争いごとや、角が立つようなことはできるだけ避けたい。
関わりは少なく、
静かに、淡々と、生を全うしたい。
仕事上では、それに増して自分を意図的に殺している。
感情で動くことは、妨げにこそなれ、益にはならない。
故に慮って判断することを最優先としている。
そこに自己はほぼ必要ない。


ギターロックのような激しい音楽はほとんど耳に入ってこなかった。
音が大きくて激しい、それだけで少し苦手に思えた。
そんなに声を張り上げなくとも、
言いたいことは伝えられるのではないか。
以前の私には理解できなかった。


そんな時、出会った。
ストレイテナーに。


たまたまスペシャで聴いた{THE REMAINS}が何故か頭から離れなくなり、
ほとんど勢いでシングルを買った。
最初に耳に飛び込んできた{WHITE ROOM BLACK STAR}
衝撃だった、と言っていい。
冷えた空気とザラついた意識、
痛いほど美しい光景。
私の観たことのない世界が、
・・・もしくは、いつか見た、既に忘れてしまった世界が、
そこに広がっていた。


気づいてしまった。
私の中にも、熾火のように燃える想いや、
叫び出したい正体の知れない衝動があることを。
そして、
ぶつかり合った音が散らす火花の美しさや、
激しい音の渦の中に、
まっさらな雪景色のような静けさがあることを。


ストレイテナーの熱と美意識は、
私が見ずに、もしくは表に出さずに済まそうとしていたものを、
あっさりと提示し、
その音に巻き込んで引きずり出してしまった。
意外なことに・・・これが、たのしいのだ。
もちろん、痛みも苦しみも、
ぞっとするほど汚いものも同時に見えるけれど、
その音とともに在ることは、途方もなくたのしい。


こんなこと、知ってしまったら、もう、後戻りはできない。
ならば、
常に世の中と、自分と、自分たちと、戦っている彼らと共に、
己と、世の中と、戦うまでだ。
たのしみながら。


そんなこんなで、8年が経ちました。
かなり鍛えられたと思います、主に身体が(笑)
聴く音楽も随分広がった。
やっと少し、4人が描く世界に近づけているんではなかろうかと、
感じる今日この頃。
これからも、置いていかれないように日々精進いたします。


いつも、一歩先、新しい視点を拓いてくれる、
その姿勢を信頼しています。
メジャーデビュー10周年おめでとう。
ストレイテナーでいてくれて、心からありがとう。
どこまでも、行きましょう。